4/7(金)に、株式会社OVERKASTの遠藤哲生さんを講師にお呼びして、「コミュニケーション」というテーマで勉強会を行いました。
この勉強会は、普段から親交の深い株式会社おいかぜさんと、有限会社アーキテクトタイタンさんとの、合同勉強会の第2回目にあたります。
会社の枠をこえて、お互いに興味関心のあるテーマについて学ぼうというこの勉強会。
今回のタイトルは、《Webディレクターのための「チーム内コミュニケーション」と「対クライアントコミュニケーション」の考え方》でしたが、総勢19名の参加者の中には、ディレクター以外にもデザイナーやエンジニアの姿も少なくありませんでした。
職種によらず、「コミュニケーション」は普遍的なテーマ。
私自身、翠灯舎ではディレクター兼ライターとして仕事をしておりますが、それぞれにおける細かな悩みや課題はすべて、
「ちゃんと思っていることが伝わっているのかわからない」
というのが、根っこのところで共通しているように思います。
遠藤さんご自身も、エンジニアとしてキャリアをスタートし、その後デザインを学び、現在は「エンジニア」「デザイン」「ビジネス」の三者間をつなぐディレクターとして活動されているという経歴の持ち主。
そんな様々な領域の職種を経験されてきた遠藤さんは、どのように「コミュニケーション」を捉え、どのようなことを大事にされているのでしょうか?
今回の勉強会では、コミュニケーションのテクニックではなく、本質から考え直す、とても刺激的な時間となりました。
【そもそも「コミュニケーション」って何だろう?】
「チーム内」「対クライアント」と、タイトルでは「コミュニケーション」について分けて考えていますが、そもそも「コミュニケーション」って何なのでしょうか。
「ポストイットに、コミュニケーションとは何か、一文で書いてみてください」
と遠藤さんに言われ、とっさに私が書いたのは「意思疎通」。
英語の授業で習ったcommunicationの日本語訳そのものです。
もっと平易な言葉で言うと「思っていることを互いに伝え合うこと」かなと思いました。
遠藤さんいわく、広辞苑にはこのように書かれているそうです。
「人間の間で行われる知覚・感覚・思考の伝達」。
「思考」はわかるけれど、「知覚」「感覚」ってどういうことでしょう……?
遠藤さんは、
・人と人との間には、「言葉で通じるもの(内容)」と、「言葉で通じないもの(関係)」のふたつが存在する
・「関係」が「言葉」をつくる
と言いました。
ー「すべてのコミュニケーションには、「内容」と「関係」の二面があり、後者は前者を包み込み、そのメタ次元のコミュニケーションをなす」(出典:『コミュニケーション学講義』)
それを聞いて私は、「言葉で通じないもの(関係)」のほうを取りこぼしていたなと思いました。
言葉で通じないものというのは、たとえば表情とか、態度とか、仕草とか、声とか、トーンなどです。
なるべく言語化するとか、ドキュメント化するとかばかりに気をとられていましたが、
そういったものにあまり注意を向けていませんでした。
確かに、同じ内容を伝えるのでも、自分の家族に伝える場合と、初対面の人に言うのとでは言い方が異なります。
「関係」が異なれば、伝わりやすい「言葉」もおのずと変わってくる。
「内容」が「言葉」をつくると思い込んでいた私にとって、それは発想の大転換でした。
【「心理的な安心の場」をつくるために】
Googleでは、どうしたらチームのパフォーマンスが上がるのかの研究がなされていて、そのキーワードとして「心理的安全性」が挙げられているそうです。
それは、みんなが「あいつ無能だなーとか思われたらどうしよう」とか「こんなことして怒られたらどうしよう」などといった不安をもたずに、のびのび、リラックスして発言・行動できる状態とのこと。
遠藤さんは、そんな「心理的な安心を生む場」をつくるために、コミュニケーションにおいて大事にしていることのひとつに、
「HRT」(出典:『Team Geek』)
ということを挙げていました。
HRTとは、Humility(謙虚)、Respect(尊敬)、Trust(信頼)の頭文字。
お話を聞きながら、この3つはそれぞれベクトルが違えど、すべて繋がっているように思いました。
自分は発展途上であると自覚することで、人は学んだり、誰かと力を合わせようとしますし(謙虚)、
他者のこれまでの仕事をきちんと評価することで、その人を大事に扱えるようになり(尊敬)、
その人を信じて頼ろうと決めることで、仕事が増え、広がり、チームが機能します(信頼)。
謙虚と卑屈、尊敬と劣等感、信頼と丸投げは似て非なるものですが、
それらの違いは、建設的かどうか、次に繋げられているかどうか、ということなのではと思いました。
失敗やうまくいかないことばかりに目を向けるのではなくて、「ではどうしたらうまくいくだろう?」と前向きになることが、「心理的な安心を生む場」を構成するひとつの要素になるのではないでしょうか。
【みんなの課題について話してみよう】
この勉強会の前に、参加者全員に
・コミュニケーションにおいて課題だと思うこと
・コミュニケーションにおいて工夫していること
について聞きとりをしていました。
各自が感じる課題にもいろいろあり、例えば
・伝えたつもりが、ちゃんと伝わってないことが多い。認識のずれがある。
・チームメンバーやクライアントの事情がよくわからない。
・誰が何をやるのかはっきりできていない。
・相手となかなか打ち解けられない。
・怒る人がいるとやりにくい。
などなど。
それを見ながら(あ、みんな同じようなことで悩んでいるんだな……)とちょっとほっとしました。
また工夫していることには、
・タスクとスケジュールを明確にする
・ドキュメントを作る
・相手のスキルを尊重する
・仕事以外の話を積極的にしてカジュアルな雰囲気をつくる
・ビビらずに意見を言う
などが挙がっていました。
さてここからは、ざっくばらんにディスカッションタイム。
遠藤さんに対して質問を投げかけたり、今まさに悩んでいることを具体的に話したり。
遠藤さんからはそれぞれに回答がありましたが、そのどれもが
関係を育てていくこと
に帰結するように思いました。
まずは「心理的な安心」を土台にもった関係を育むこと。
その「関係」が言葉をつくり、「内容」を伝え、ひいては密度の高いコミュニケーションをつくっていきます。
「内容」だけに着目するのではなく、まずは「内容」を囲んでいる「関係」に目を向けることの大事さを感じました。
【では、来週からどんなことができるだろう?】
遠藤さんの講義、そしてみんなの課題や工夫していることを共有した2時間。
最後に「では、来週から何をやろうと思いますか?」ということで、その答えを、各自ポストイットに書き出しました。
そのポストイットをグルーピングし、共感できるものにシールで投票します。
チーム内コミュニケーションで多かったのは
・HRT
・あたらしいメンバーと仕事をしてみる
の2点。
ちなみに私もHRTに一票!
HRTを意識することで、あたらしいメンバーとの仕事は自然と生まれていきそうです。
そして対クライアントコミュニケーションで多かったのは、
・多角的な提案をして、本音を探る
・時々叱る(当事者意識とプロ意識をもって、ビビらずに意見を言う)
の2点でした。
こちらは、「本音」と「ビビらない」がキーワード。
当事者意識をもって、きちんと意見を言い、フィードバックを得る、というプロセス、あるいはそういったことができる「関係」づくりに、みんなの関心が集まったようです。
【コミュニケーションは、「生む」のではなく、「すでに在る」もの】
最後に、遠藤さんが「コミュニケーション」は「オーケストラに入ること」だという言葉を教えてくださいました。(出典:『コミュニケーション学講義』)
今目の前にあるオーケストラに入って、他者とノリ(関係)を合わせて、自分の音(言葉)をつくりだすこと。
この日に学んだ「関係が言葉をつくり、つないでいく」という考え方は、これからも忘れずにいたいです。
その後、三社と遠藤さんで交流会を行いました。
食事には、おいかぜさんの近くのNOTTA CAFEさんのオープンサンド!
普段なかなか話せない方とも交流することができ、楽しい時間になりました。
コミュニケーションの根幹から考える、とても刺激的な勉強会でした。
ここで学んだことを、毎日の仕事に活かしていきたいです。
遠藤さん、本当にありがとうございました!
(土門蘭)